朝である。
伊勢市駅の近辺を歩く。松尾芭蕉は旅行をしているとよく出会うおじさんである。俳句が好きなようで、東北を中心にあちこちに一句残している。ここは東海だが遷宮を観たかったらしく、その時の一句(どころか20以上詠んでいるようだ)が

「月さびよ 明智が妻の 咄しせん」
というもので、案内の白板によると、芭蕉は門人である島崎又玄(ゆうげん)の家に滞在していたが、伊勢神宮の御師である又玄はよほど貧しかったらしい。それでも彼の若い妻は芭蕉に不便の無いよう、温かくもてなしたという。

明智とは、本能寺にて織田信長を討った、あの明智光秀のことで、その妻が客人をもてなすために自身の髪を売ったというエピソードになぞらえている。「月さびよ」とは静寂の中に満ち足りた趣を表現している。
「小粋だな」と私は思いながら踏切で電車が過ぎるのを待つ。このすぐ後ろに鎮座していた月夜見宮の雰囲気が思い出される。静かな場所だったが、ビジネススーツを身にまとった一団がそろそろとお参りに来ていた。決して無粋ではなかった彼らの足音によって、その地の静謐さに気付かされた。

伊勢市駅は近鉄とJR東海とに分かれていて、駅舎も南北に分かれている。ふらふらと歩いて近鉄の伊勢市駅に着いた。

GWとはいえ平日でもあるこの日、6時を過ぎて制服さんやスーツ殿が次々にホームへ吸い込まれていく。雨なので、車で送ってもらう人もいるようだ。

近鉄側は、観光地のそれではなく、近郊都市として通勤、通学客が多いようだった。見渡した感じでも、中規模くらいののワンルームや住宅が建っていて、反対側に一時は内宮よりも人気が高かった外宮の参道があるとはちょっと考えにくくて面白い。
てっきり跨線橋でJR側に渡れるものだと思っていたら、改札内でつながっていたらしく渡れない、だからといって戻って踏切も芸が無いので、大回りにその先のガードまで歩いてみた。その十字路に山田奉行所跡があったのだが、気付かずガードをくぐってしまったことを、今マップを見ながら知って悔やんでいるOrz

JR東海参宮線側の駅前まで来ると、水をせき止める「堰」由来する名を冠す「世木神社」があった。主祭神は天牟羅雲命(あめのむらくものみこと)という、この地の豪族で、代々外宮の祢宜を務める・度会氏の遠祖とされており、この地の治水を司ったという。

JRの方の伊勢市駅まで来たら、ホテルはすぐそこだ。6:30。そろそろ家族を叩き起こす算段をせねばなりますまい。宿は素泊まり。モーニングへ行きませう☕
つづく👇
ブックマーク&ブログランキング 応援してね!