山の辺の道は、夜都伎神社の先、中盤に入る。里山のような風景が多かった道だったが、次の竹之内環濠集落を目指して歩いていると、人家の合間を縫うような道に入った。

生産者直売所である「せんぎりや」も、基本的には無人販売らしい。これほど品揃え豊富で無人販売とはちょっと恐れ入ってしまった。
冬野菜は大根、白菜、キャベツ、水菜、リーフレタス、ワケギが100~200円。稲を谷水で育てたというヒノヒカリは5㎏3500円だ。他にアイスモナカ、カット苺、小米の切りもち、みかんなど。

私は荷物を増やしたくない一心でみかんも買わなかったが、古道歩きでバラ売りしていてくれたら有難かったと思う。この空気感の中で歩いて食べるみかん、これは絶対に美味しいはず!

民家から視界の開ける畑地が広がる。胸のすくような青空と遠望する奈良盆地。大和国は周囲を山塊に囲まれ狭っ苦しさのある地域だと思っていたが、これだけ広ければそうした先入観はきれいに去って行ってしまった。
古代人も、もしかしたら実際にこの古道を歩きながら大和盆地を眺め「ここに!」我々の国の首都を置こう。と思ったのかもしれない。
奈良盆地を一望する贅沢な景観を横目に、山の辺の道は多少うねりながらもしばらくの間は直線的に続いているようだ。

歩いてみると、思いのほか古道歩きの人は多く、すれ違えばご挨拶、並走の方は抜きつ抜かれつ、苦笑しながら頷いてやり過ごすが、やがてどちらともなく離れていくと、それはそれでちょっと心細くなったりもする。

ただやっぱり、本当はひとりでいるのがたまらなく好きなんだなぁ、と、こうして一人旅をするたびに自分で自分に驚いたりもする。
そうこうしているうちに、竹之内環濠集落に着いた。
田畑の間を歩く道が県道267号と交差する場所が、竹之内環濠集落の入口だ。左折し古道を逸れて東へ30mほど。竹之内町公園に公衆トイレと環濠集落についての案内板がある。

てっきり古代の遺構かと思っていたが、案内によると室町~戦国時代の動乱期に外敵から集落を守るための防御施設として築かれたものと考えられている。現在は環濠の一部を遺すのみであるが、その濠は平時には用排水に利用されていることが多く、元々そうした機能をも備えていたのでは、としている。

ちょっとだけ集落を歩いてみて、公園の東側へ。現存する環濠の向こうに奈良盆地が開けている。この地区は環濠集落としては標高の高い位置にあり、およそ100mであるという。山の辺の道を歩くなら、この景観はぜひ体験しておきたい。おすすめだ。

その先、しばらくは周辺に高い建物もなく、視界の開けた道が続く。道幅も狭く車は通れない。田畑の中を歩いている。目の前がパッと明るくなったと思うと、視界が黄色で埋め尽くされた。菜の花畑だった。

東に目をやると、山塊の隆起する手前まで田畑が広がり、所々でたき火の煙が上がっている。この美しい風景を眺め、古代の天皇の民を思うエピソードを思い出した。
仁徳天皇が高台から民の家々を眺めた際、かまどから炊飯の煙が立っていないのを憂いて3年間の税を免除した「民のかまど」というエピソードがある。
天皇自らが贅を惜しみ倹約をし、宮殿の屋根の茅葺きの葺き替えさえも行わなかったという。

やがて努力が実を結び、豊かになった国を喜び
「高き屋に のぼりて見れば 煙立つ 民のかまどは にぎはひにけり」
と言祝ぎのうたを詠んだ。
また、天香具山から「国見」をした舒明天皇は
「大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ海原は かもめ立ち立つ うまし国そ 蜻蛉島 大和の国」
と謳う。

これも言祝ぎのうたで、実際には大和盆地から海もカモメも見えるはずがないのだが、こうして言い切ることによって、実際に豊かな「うまし国」が実現することを願っている。
日本には、神話の昔から「言霊」への信仰が根付いていた。今でも残っている。縁起でもないことをいうなよ、といった、悪いことを言うと実現してしまうような気がして落ち着かない、あれだ。
美しい言葉で褒めれば美しく、汚い言葉で罵れば汚くなる。信仰ではあるが、その中にも真実が含まれていると私は思う。
天皇は詩を詠んだだけではないか?と思うのは現代の感覚で、大昔は「言祝ぐ」ことが重要な政治であった。そもそもこの日本という国は、神話に端を発する世界最古の国である。神代から帝と民は決して互いに遠い存在ではなく、褒め、褒められ、与え、与えられ、助け合うことを相互に繰り返し、紐帯を紡いで来た民族なのだ。
そんなことをぼけっと考えていたら萱生(かよう)町に入った。
古道歩きにはトイレが整備されていると大変ありがたい。「~山の辺の道~安心トイレガイド」が舟渡地蔵手前の公衆トイレに張られていた。

少し前に触れたかもしれないが、自販機なども古道沿いにいくつもあり、幹線道路も比較的近いので、無理なくのんびり歩くのが、山の辺の道には適しているのではないでしょうかねぇ。
この先、大和古墳群!
To Be Continued👉
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